財布が鞄の底から出てこない、タクシーの座席に携帯電話を置き忘れた、カフェの椅子に鞄を一分だけ置いたままにしてしまった。旅行中にはこうしたことも起こりますが、その場で心配するほど大変にはならないことがほとんどです。今では手続きの多くが、待合室や行列とは無縁の、電話やパソコンひとつで完結します。お部屋から落ち着いて進められる順番をご案内します。

最初の数分:何よりもまずカードの利用停止を

最初に行うべきことは、警察への連絡ではなく、決済手段の保護です。全国銀行間利用停止サービスの電話番号0 892 705 705は24時間365日対応しており、ご利用の銀行の停止センターへ自動的に転送されます。通話料がかかる番号ですが、支店の連絡先が手元にない場合には最も早い方法です。被害届を先に出す必要はありません。まずカードを止め、届出はその後で構いません。

もし襲われた、あるいは差し迫った危険を感じる場合は、移動しようとせず、警察緊急通報の17番、またはEU域内どこでも通じる欧州共通緊急通報番号の112番(盗難や暴行の場合も含みます)にすぐお電話ください。

外出せずに被害届を出す

加害者が不明な盗難や器物損壊については、内務省のオンラインプラットフォームから被害届を提出できます。ほとんどの場合、警察署へ出向く必要はありません。申告内容によっては、警察官や憲兵から連絡が入り、対面で申告内容を補足することもありますが、これは手続き上ごく普通の流れであり、悪い兆候ではありません。

始める前に知っておきたい点がひとつあります。本人確認には必ずFranceConnectが必要です。同サービスに対応するアカウントをお持ちでない場合は、最寄りの警察署窓口での届出が通常の方法となりますが、これも決して身構えるようなことではありません。

内務省が提供する無料アプリMa Sécurité(iOS・Android対応)では、同じ手続きに加えて便利な機能もまとめて利用できます。警察官・憲兵との24時間365日対応のセキュアチャット、警察署・憲兵隊の地図、防犯のためのアドバイス集、そして役立つ電話番号の一覧です。滞在中であれば、これが最も手軽な近道です。

身分証明書:紛失と盗難では手続きが異なります

両者の違いは明確です。国民身分証明書やパスポートの盗難の場合は、再発行の手続きを始める前にまず被害届を提出します。単なる紛失の場合は事前の届出は不要で、再発行を申請する際にその場で紛失を申告します。

再発行の手続きは、まずFrance Titres(ANTS、passeport.ants.gouv.fr)でのオンライン仮申請から始まり、続いて認可を受けた市区町村役場での予約(事前予約をおすすめします)へと進みます。滞在中に対応しなければならないことは何もなく、これらの手続きはご帰国後、落ち着いてから進めていただけます。

外国旅券を紛失した場合:まずはご自身の大使館・領事館へ

外国発行の旅券をお持ちで旅行されている場合、頼るべき相手はフランスの行政機関ではなく、パリにあるご自身の国の大使館・領事館です。紛失・盗難証明書の発行や、場合によっては仮渡航書類の発給を行うのはこちらになります。フランス国内の各国代表機関の公式一覧はdiplomatie.gouv.frで公開されています。手続きや所要日数は国によって異なるため、一般的な案内よりもご自身の大使館・領事館へのお電話が確実です。

この場合、フランス国内で提出した被害届は、あくまで書類の一部として添付する補足資料にすぎません。役には立ちますが、大使館・領事館での手続きに代わるものではありません。

9区警察署へ、徒歩約20分

実際に出向く必要がある場合、この地区を管轄する警察署は9区警察署(14 rue Chauchat)で、受付は24時間365日対応しています。警察の全国電話案内34 30では、出向く前に手続きの詳細を確認できます。41 rue de Clichyからは約1.3km、rue de Châteaudunを通ってrue Laffitteへ抜ける徒歩ルートで約20分、タクシーやVTC(配車サービス)であれば交通状況にもよりますが8〜10分ほどです。この距離であれば地下鉄を使っても時間の節約にはならず、その他の移動手段についてはパリの交通手段比較記事で詳しくご紹介しています。

調書に署名するため再度出向く必要がある場合は、その場で予約をお取りします。公開されている情報によれば目安は営業日で3日から10日程度とされていますが、実際の案内は現地でご確認ください。銀行カードの利用停止と届出という肝心な部分はすでに終えているため、予定を慌てて変更する必要はありません。

フロントにお任せいただけること

タクシーの車内やレストランのホール、界隈の劇場に忘れ物をしてしまうことは、思われている以上によくあります。おひとりで動き出す前に、まずフロントへお立ち寄りください。お電話のお手伝いや手続きのご案内をいたします。こうした朝こそ、心のこもった行き届いた対応がその日一日を大きく変えてくれるものです。

また、デジタルコンシェルジュは、普段お使いの連絡先が入っていない真新しい携帯電話からでもご利用いただけます。

財布と一緒にカードや交通チケットもなくなってしまった場合は、地下鉄チケットの購入ガイドで、ホテルからすぐの場所で数分で買い直せる方法をご案内しています。

盗難や紛失にかかる時間は、多くの場合ひと朝で済みます。カードの利用停止、オンラインでの届出、しかるべき窓口への一本の電話。それで十分です。滞在の残りの時間は、そのまま続いていきます。